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春季祭 宵宮4月13日(土)16時 本祭14日(日)15時

新潟県新潟市江南区(旧横越町)木津の賀茂神社には棧俵神楽という極めてめずらしい愉快な神楽が存在しています。このような奇抜な神楽は、世間広しといえども、あまり見当たらないといわれています。この神楽は稲藁を編んだ棧俵を2つ合わせて大きな口とし、茄子の目にカボチャの鼻、熊稗を髪として、歯は唐竹を割り組み合わせて、金紙を張りつけて作られた見事なものです。当時の若者達が創意と工夫をこらした全くの手作りの神楽です。

木津は上・中・下の3つの集落により形成され上木津には諏訪神社、中木津には日吉神社、下木津には賀茂神社があり、それぞれ集落の氏子によって祀られています。日吉神社には古くから伝わる立派な大神楽があり、現在も保存会の手により毎年の秋祭りには神楽舞やお伊勢踊りなどが披露されています。しかし、昔から賀茂神社の氏子の若者だけが大神楽をもたなかったとから、毎年の秋祭りが近づくと今年こそは神楽を買ってもらいたいと、氏子の役員や地元の有力者にお願いをくりかえすのですが、なかなか理解が得られず途方にくれるだけでした。地元の古老の話によると、この棧俵神楽が登場し滑稽な舞を始めたのは明治30年頃だといわれています。

ある秋祭りの晩にお宮に集まり、御神酒をいただいて元気を出した若者の1人がやおら立ち上がって、当時の農家であればどこでも見られた、古棧俵を2枚と鶏小屋から蚊帳を持ってきて、宵宮参りの大勢の氏子を前に威勢よく滑稽な舞をやってのけ、皆を爆笑させてということです。これは神楽を買って貰いたい若者たちの氏子役員に対するデモンストレーションだったのではないかとも聞いています。何しろ当時の木津は水害の連続で、県の水害史にも残る木津切れの有名な地域でした。特に下木津は大正2年8月28日の豪雨で、賀茂神社前の五本榎堤防が破堤し、死者2名、流出家屋2戸、冠水箇所多数で、住民は小学校2階で相当期間避難生活を余儀なくされたということです。悲惨極まる水害により、刈入を目前にしていた稲も壊滅的な被害をこうむり、住民たちはただ唖然とするばかりでした。その年は病気になる人も多く水害の後始末などで秋祭りは中止になったそうです。住民の暮らしは苦しくなるばかりで、身をもって感じている若者たちもは、大神楽を買って貰おうという長年の夢をきっぱりあきらめ、これまで余興のように続けていた棧俵2枚だけの粗末な神楽を立派なものに作り賀茂神社へ奉納しようと、皆が集まり知恵を出し合って作られたものが今日も伝わる手作りの棧俵神楽です。
この神楽は水害と闘う苦しい農民の生活の中から生まれた神楽なのです。お金さえ出せば手に入らないものは無いという現代社会に、お金が無くとも創意と工夫で出来る、楽しめるというこの棧俵神楽の由来を知り、物質文明、飽食時代といわれる現代に生きる私たちにとって何か考えさせられるものがあるのではないでしょうか。
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