新潟県新潟市江南区(旧横越町)木津の賀茂神社には棧俵神楽という極めてめずらしい愉快な神楽が存在しています。このような奇抜な神楽は、世間広しといえども、あまり見当たらないといわれています。この神楽は稲藁を編んだ棧俵を2つ合わせて大きな口とし、茄子の目にカボチャの鼻、熊稗を髪として、歯は唐竹を割り組み合わせて、金紙を張りつけて作られた見事なものです。当時の若者達が創意と工夫をこらした全くの手作りの神楽です。
木津は上・中・下の3つの集落により形成され上木津には諏訪神社、中木津には日吉神社、下木津には賀茂神社があり、それぞれ集落の氏子によって祀られています。日吉神社には古くから伝わる立派な大神楽があり、現在も保存会の手により毎年の秋祭りには神楽舞やお伊勢踊りなどが披露されています。しかし、昔から賀茂神社の氏子の若者だけが大神楽をもたなかったとから、毎年の秋祭りが近づくと今年こそは神楽を買ってもらいたいと、氏子の役員や地元の有力者にお願いをくりかえすのですが、なかなか理解が得られず途方にくれるだけでした。地元の古老の話によると、この棧俵神楽が登場し滑稽な舞を始めたのは明治30年頃だといわれています。